商店街活性化のポイント

(株)中央総合研究所 
鎌田 浩一

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┏┏  【1.はじめに】                             

 
  中小企業庁の「平成24年度 商店街実態調査報告書」によれば、「繁栄している」と答えた商店街が1.0%、「繁栄の兆しがある」が2.3%、「まあまあ 横ばいである」が18.3%、「衰退の恐れがある」が33.0%、「衰退している」が43.2%、となっており、76%もの商店街が良くない状況にあると 答えています。
 また、現況の商店街が抱える大きな問題としては、「経営者の高齢化による後継問題」が63.0%、「集客力が高い・話題性のある店舗/業種が少ないまたは無い」が37.8%、「店舗等の老朽化」が32.8%、と上位を占めています。

 シャッター通りの出現など、全国的な商店街の衰退が叫ばれて久しい昨今ですが、商店街は、経済活力の苗床である「小規模商業者の集積」であるとともに、防災・防犯などをはじめとする「地域コミュニティーの担い手」としての重要な役割を担う存在です。
 今後、政府による「地方創生」も本格化してくる中、地域の担い手としての「商店街の活性化」が改めて求められています。

 当コラムでは、商店街活性化のポイントをまとめてみました。自分の商店街を何とかして盛り立てたいけれど方法がわからない、商店街の次世代を担うリーダーとして学びを得たい、という方にとってご参考になりましたら幸いです。


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┏┏  【2.活性化のための7つのポイント】                             


 うまい具合に活性化への歩みを進めている商店街と、なかなか一歩を踏み出せずにいる商店街を分かつポイントの代表例として、7つのキーワードを挙げてみました。

1)輝く個店
 一つ目は「輝く個店」です。
 苦労しておられる商店街の中には、「商店街活性化」という言葉が一人歩きしてしまい、「目的」を見失ってしまうケースが多く見受けられます。イベントを打つけれど売上につながらない、一時的に賑わうだけで効果がない・・・。うまくいかない商店街に共通する悩みです。
 うまくいっている商店街の多くは、商店街活性化の目的を「個々の店が輝くこと」に置いています。賑わいの創出、コミュニティーの担い手といった副次的な機能はあるものの、本来の機能は「商機能の提供」にあることをしっかりと認識しているのです。
 したがって、同じイベントを打つにしても、「単なる人寄せ祭り」の実行ではなく、「リピート来店していただけるための仕掛け」を盛り込むよう工夫しています。そして、その前提として、日頃から「魅力的なお店」への革新努力に余念がありません。
 「個々の店が輝くことによってこそ商店街が活性化する」、「商店街が活性化することで個々の店がますます輝く」という原点に立ち返り、目的がブレないよう腰を据えて取り組んでみてはいかがでしょうか。

2)三種の神器
 二つ目は「三種の神器」です。
 商店街活性化の方法はさまざまありますが、近年、三種の神器として人気があるのが「100円商店街」「まちゼミ」「バル」の3つです。
 まだやってみたことがない、という方は、実施条件が揃うようであればチャレンジしてみる価値アリです。
 ただし留意点があります。
  これら三種の神器は、他の多くのイベントが「賑わい創出」に重きを置いているのに対し、客が喜び・店が喜び・街が喜ぶ「三方よし」の理念に基づいたイベン トです。つまり、一過性の単なる人寄せイベントという感覚で実行しては全く意味がなく、イベントに内包された「お客さんとして繰り返し来てくれるようにす るための仕掛け」をよく理解したうえで実施することが重要なのです。
 前述の「輝く個店」づくりとの相乗効果を生み出すためのイベント、という認識で行えば、一定の成果が期待できます。

3)顧客ニーズ
 三つ目は「顧客ニーズ」です。
  苦労しておられる商店街の中には、「世代間ギャップ」「飲食店vs物販店」「商店vsテナント貸し」「在住vs通い」といった、立場の違いによる認識や危 機感の相違などから、商店街一丸となった活性化対策実行に踏み出せない場面が数多く見受けられます。総論は概ね賛成なれど各論となると自分にとっての利害 関係が顔を出し反対に回る、会合に参加しない、商店街活性化活動に非協力的、といったケースです。
 こうした問題に対し、うまくいっている商店街 の中には「顧客ニーズを錦の御旗」にして議論をリードし、活性化施策を実現させている例がよく見られます。商店主仲間内だけの議論や好き嫌い・利害といっ たことではなく、アンケートをとって「お客様や住民が求めること」を明らかにし、ニーズ・ウォンツを叶える施策を実行することで商店街を活性化させよう、 というリードの仕方です。
 この作戦で進めていくと、比較的多くの商店主の賛同が得られやすいですし、最初は乗り気でなかった商店主も、施策が成功してお客様や住民が喜び、参加商店が繁盛し始めるのを目の当たりにすれば、あとから参加を希望するようになります。
 もし商店街組織内の意見調整に難航しておられるようでしたら、一度試してみてはいかがでしょうか。

4)商店街活性化の救世主
 四つ目は「商店街活性化の救世主」です。
 苦労しておられる商店街の中には、「商人としてのプライド」や「自分たちだけの常識」あるいは「しがらみ」といった目に見えない力が働いていて、商店街組織内の意見調整や新たな試みへの妨げとなっているケースがよく見受けられます。
 これらの力は、発展途上にある局面では大変意義のあるすばらしい力なのですが、こと、衰退傾向にあってナントカ現状を打破しなければならないという局面においては、けっこうお荷物になります。
 こうした場合の救世主として、「ヨソ者」「ワカ者」「バカ者」の効能が説かれています。
 硬直化して身動きがとれなくなった組織に新風を吹き込む作戦です。女性の目線、子供の目線も大変有効です。
 前述の「顧客ニーズ」作戦と合わせて、活性化のためのニーズ発見やアイデアづくりに、ぜひ救世主を招き入れましょう。

5)連携
 五つ目は「連携」です。
 うまくいっている商店街の多くは、自治会・町内会・婦人会・PTA・消防団、警察、地域住民、商工会・商工会議所、行政、教育機関(学校・大学等)、NPO法人・ボランティア団体、他の商店街、といった機関の人達と上手に連携しています。
 地域住民のニーズに対応した取り組みを行うためにも、あるいは商店街の後継者不足や新たな担い手の不足などを補完するためにも、商店街だけでは実現困難であり、地域の各団体等の連携が不可欠です。
 商店街マップづくりやキャラクターづくり、ホームページ・フェイスブック・マスコミへのパブリシティといった広報活動も、連携なしにはナカナカ難しいでしょう。
 外部との連携だけでなく、商店街内の横連携を密に行うことで、「空き店舗対策」や「遊休物件リノベーション」による活性化を成功させている例もあります。
 前述の救世主を招き入れることと合わせ、プライドやしがらみを振り払って、できるだけ幅広い連携を検討してみてはいかがでしょうか。

6)補助金
 六つ目は「補助金」です。
 うまくいっている商店街の多くは、活性化のために補助金などを有効に活用しています。国・自治体などがさまざまな商店街活性化のための補助金を用意していますので、よく研究して「計画的」に活用なさることをおすすめします。
 ただし留意点があります。
  補助金頼みはよくない、ということです。たとえば、「一店逸品」の開発費用や「地域資源活用」の初期費用、勉強会への参加、といった助走や勉強のために補 助金を用いるだけならよいのですが、行事などの運営自体に補助金を活用してしまい、補助金がなくなったとたんに事業が継続できなくなるという憂き目に遭っ ている商店街が散見されます。
 また、ハードへの投資に補助金を活用したまではよいのですが、その後のメンテナンス費用を考慮しておらず窮地に陥っている商店街も見受けられます。
 これらを予防する意味で、「計画的」に活用いただきたいと思います。

7)支援機関
 七つ目は「支援機関」です。
 うまくいっている商店街の多くは、活性化のために支援機関を有効に活用しています。
 たとえば、「全国商店街支援センター」、まちづくり情報サイト「まちげんき」、中小機構や商工会議所、各都道府県といった機関が、まちづくり支援、商店街活性化支援、個別商店支援などを行っています。
 無料の支援もありますので、ぜひお気軽に有効利用なさることをおすすめします。


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┏┏  【3.支援機関活用のすすめ】                             


 前述の支援機関活用のすすめの一例として、東京都(東京都中小企業振興公社)の支援についてご紹介します。
 東京都中小企業振興公社で実施している支援のうち、とくに商店街活性化に役立つものを抜粋してみました(平成27年1月現在)。
 春先から徐々に募集が開始されはじめますので、今年からの改善に向けた申し込みに間に合うよう、ぜひ今のうちから概要を把握なさってみてはいかがでしょうか。

1)商店街パワーアップ作戦
 商店街の活性化・商店の経営改善をお手伝いするため、実務に明るい専門家チームを派遣し、商店への個別アドバイス、商店街での勉強会、相談会を開催しています。費用は無料です。

2)商店街リーダー塾
 商店街の役員等を対象に、講義とグループワーク等により商店街マネジメント能力と地域住民や団体等とのネットワークづくりができる行動力を実践的に養成するコースです。費用は無料です。