リース契約のトラブルに気をつけましょう!

(株)中央総合研究所 
鎌田 浩一

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┏┏  【はじめに】                             



 "リース契約を勧誘に来た販売会社の営業担当者に騙された・・・"

 「リース契約のトラブル」。
 そんな話を聞いたことがあるような無いような・・・。
 
 もしかすると、今、当コラムをご覧の経営者様には無関係かもしれませんが、実に多くの中小企業者が、この「リース契約のトラブル」に遭遇し、悩みを抱えておられます。

 ひと頃から比べればかなり減ったとはいえ、筆者が対応している公的機関の相談窓口にも、いまだに多くの「リース契約のトラブル」(クレジット契約なども含む)に関する相談が持ち込まれています。

 決して他人事ではなく、「すべての中小事業者にとって留意すべき事柄」との認識を持つ必要があろうかと思います。

 

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┏┏  【トラブル発生の背景】                             



 トラブルが多発しているのは、「小口リース取引」といって、「事業者」(法人または個人事業者)、「販売会社」(サプライヤー)、「リース会社」の三者で行われる、比較的少額な案件を中心に行われるリース取引です。


<一般的な小口リース取引の流れ>

①営業
・「販売会社」の営業マンが「事業者」を訪れ、設備導入に関する営業を行います。
・飛び込み営業、繰り返し営業など、さまざまなケースがあります。

②申込
・「事業者」が「販売会社」の営業マンにリースの申込をします。
・"気軽な気持ちで契約書をよく読まずに押印してしまう"、
 "営業マンの強引な押しに負けて申込みしてしまう"など、
 トラブルのほとんどは、この時点で発生してしまいます。

③リース契約
・申込のあと、通常は、「リース会社」→「事業者」宛てに電話などで申し込みの確認が行われます。
・「事業者」への確認が済むと、所定の審査の後、
 「リース会社」と「事業者」との間でリース契約が締結されます。

④設備販売(所有権移転)
・リース契約が締結されると、「販売会社」→「リース会社」に設備が販売され、
 所有権が「リース会社」に移ります。

⑤設備代金支払
・設備販売に対応して、「リース会社」→「販売会社」に設備代金が支払われます。

⑥設備納品
・「販売会社」→「事業者」に設備納品が納品されます。
・「③リース契約」が締結される前に、一方的に納品されるケースも多々あります。

⑦リース料支払
・「事業者」→「リース会社」に月々リース料を支払います。
・リース契約期間が終了するまで支払が必要となり、中途解約はできません。


 この取引の特徴は、顧客である事業者が事業用の機器などを簡便な手続きでリースにより導入することができるようにするため、「販売会社」に「リース会社に対する顧客の斡旋」と「リース申込の手続き」を代行させている点にあります。
 事業者は、リース会社と直接会うことなく「販売会社」とのみ商談を行うことから、一部の悪質な「販売会社」が不公正な取引行為を行いやすく、"リース契約を勧誘に来た販売会社の営業担当者に騙された・・・"というトラブルが後を絶たないのです。

 

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┏┏  【どんなトラブルが多いのか】                             



 平成23年度に発生した小口リース取引トラブルは、多い順に以下のとおりとなっています。「電話機やOA機器のリース契約」が特に多いようです。

  ①電話機(FAX 含む)
  ②複合機
  ③ホームページソフト
  ④ソフトウェア
  ⑤セキュリティ関連機器
  ⑥その他(自動販売機、サーバー、IP関連機器、電光看板、通信システムなど)


 主な苦情内容は、不実告知・虚偽説明・説明不足、高額、役務不履行、対応遅延、解約未処理、販売会社倒産、などです。

 トラブルに至る典型的なケースは、「必要ないものを買わされた」あるいは「法外な値段で売りつけられた」というもので、営業マンの巧みなトークや強引な態度に押されて契約締結してしまい、後になって「中途解約できない」ことを知り、泣き寝入りしてしまうパターンです。

 トラブルに至りやすい営業マンのトーク例には、以下のようなものがあります。

・"この複合機をリース契約するとメンテナンスが無料となりトータルで安くなります"
・"今お使いの電話機は使えなくなります"
・"ホームページを作りませんか。売上がアップします。作成後の更新もやります"
・"節電器(または小型変圧器)をつけると電気代が安くなります"
・"今のリースはこちらで解約しておきます"
・"キャンペーン期間が今日までなんです。お急ぎください"

 上記のように、リース契約やITに苦手意識を持つ事業者に対して虚言あるいは強迫的な態度で契約をせまるケースが見受けられます。
  昨今では手口が多様化・巧妙化し、法に抵触するような手段で契約しておきながら、口頭だけの説明で利用者側に立証証拠を与えず、クーリングオフが商行為に 適用されないことを逆手にとって解約に応じないというのが常套手段となっています。リース契約であることの説明すらしないケースもあります。


 
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┏┏  【トラブルに至る主な原因】                             



 トラブルに至る主な原因は、以下のとおりです。


1)リース申込書(契約書)を読まずに記入・サイン・捺印してしまう

 最大の直接的な原因は、内容を掌握せずに契約してしまうことです。営業マンの巧みなトークや強引な態度に翻弄され、あるいは早合点してしまって「つい」判子をついてしまった、というケースがほとんどを占めています。


2)リースは解約できないことなどについて知識がない

 リースの知識がないのはほとんどの皆さんにとって無理からぬことですが、このことを逆手にとって行われるのが不正販売です。


3)営業マンの巧みなトークに騙されてしまう

 先に挙げたトラブルに至りやすい営業マンのトーク例の裏には、事実が隠されています。

×"この複合機をリース契約するとメンテナンスが無料となりトータルで安くなります"
説明にはなかったサービス料金がかかるなど、リース料金が高額になることがあります。見積書をしっかりチェックする必要があります。

×"今お使いの電話機は使えなくなります"
本当に電話機が使用できなくなるのか、NTTなどの「通信事業者に確認する必要があります。

×"ホームページを作りませんか。売上がアップします。作成後の更新もやります"
売上が増えないケースもあります。また、後日更新を依頼しても、"そのような契約はしていない"と返答する業者もいます。書面での契約内容を確認することが必要です。

×"節電器(または小型変圧器)をつけると電気代が安くなります"
節電効果がなかったり、電気製品が故障する場合があります。また、電力会社との「電力供給約款」に違反しトラブルになる場合もあります。

×"今のリースはこちらで解約しておきます"
契約の当事者以外が勝手に解約はできません。その結果、多重のリース契約を結ぶことになるトラブルが多数発生しています。

×"キャンペーン期間が今日までなんです。お急ぎください"
即日契約を迫る典型的な脅し文句です。

 

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┏┏  【トラブルに遭わないために】                              



 以下に、トラブルに遭わないようにするための心構え・行動基準をご紹介します。
 言われてみれば簡単なことなのですが、イザという時に「的確な対応」はナカナカできないものです。「備えあれば憂いなし」です。


☆訪問販売業者が来たら、会話を録音する!

・リースに限らず、訪問販売業者が来たときには、勧誘内容を録音するクセをつけましょう。
 今どきは、小型の録音機(ボイスレコーダー、ICレコーダーなど)が廉価で手に入ります。
・録音することで、不当営業の撃退にも役立ちます。
 また、万一裁判になった時などにも有効な証拠資料となります。


☆リース契約が必要なのか?冷静に考える!
 
・電話機や複合機などは、今どき極めて安く購入できます。
・ホームページなども、無料で作成可能な方法もあるくらいです。
・SEO対策は、基本は自分自身の日頃のマメな更新です。
 高額な契約を必要としない場合がほとんどです。
・そもそもリース契約が必要なのか、冷静に考えましょう。


☆その場での記入・署名・捺印は絶対にしない!

・"今お使いの電話機は使えなくなる"、"キャンペーン期間が今日まで"は、たいてい妄言です。
・しつこく契約を迫る業者に対しては、ともかく相手のペースに乗らないことです。
・その時・その場で申し込まなければならないものなど、何一つありません。
・大前提の心構えとして、その場での記入・署名・捺印は絶対にしないことです。


☆「リース契約のポイント」を知っておく!

・事業者間(個人事業主を含む)の取引には、原則的にクーリングオフ制度が適用されません。
(ただし、電話機やパソコンのリースにおいては、利用者が事業者であっても、「主として個人用・家庭用に使用するためのもの」については、クーリングオフが認められます。)
・リース契約後は中途解約できません。
・リース会社はリース物件の保守・点検を行いません。
・リース物件の所有権は、リース期間が終了してもリース会社にあります。
 事業者(顧客側)に移転することはありません。


☆複数の業者から見積もりをとる!

・突然訪問してきた営業会社の言葉をうのみにしないことです。
・同じような商品・サービスを販売している業者を探す一手間を加える余裕を持ちましょう。
・今どきは、インターネットで検索すれば、さまざまな業者の情報や評判情報を得ることもできます。


☆リース契約の内容などについて十分に理解してから契約する!

・面倒くさがらずに、見積書などの書面を十分に読みましょう。
・特に、「リース契約の内容」「対象設備の内容」「解約条件」「月額のリース料」「リース期間」
 「リース期間中に支払うリース料総額」などをしっかり理解してください。
・自分自身がしっかり納得してはじめて、リース申込書(契約書)への記名・署名・捺印をしましょう。


☆リース会社に確認する!

・リース契約の内容に不明点などがある場合は、
 リース申込書(契約書)に記載されている「リース会社」に確認しましょう。


 
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┏┏  【万一トラブルに遭ってしまったら】                             



 "騙された!"と気づいてからでは、後の祭りになっているケースがほとんどです。
 "なんとなく不安・・・"という段階で、第三者に相談するようにしましょう。


1)小口リース取引トラブルの相談窓口

 小口リース取引トラブルの直接的な相談窓口は、以下の通りです。
 リースに関するご相談に乗り、問題解決のために参考となる助言をしてくれます。

 「公益社団法人リース事業協会」(平成25年6月10日現在)
   リース相談窓口相談専用ダイヤル:03-3595-2801
    受付時間 【平日10:00~12:00/13:00~16:00】


2)事業者向けの一般的な相談窓口

 小口リース取引トラブルかどうかよくわからない場合は、事業者向けの一般的な相談窓口に問い合わせてみましょう。
 この手のトラブルは「消費者センター」と思いがちですが、「消費者センター」は一般消費者向けであり事業者の相談には乗ってくれませんので、「事業者向けの窓口」に相談するとよいでしょう。
 東京都であれば「東京都中小企業振興公社」などがあります。弁護士無料相談などもありますので有効に活用なさるとよいでしょう。


3)対処法の基礎知識

 リース契約は、契約が完全に締結されてしまったあとでは中途解約できませんが、「判子をついてしまった直後」など、手続きが完了していない時点であれば「リース申込を撤回することが可能」なケースもあります。以下に、状況ごとの対処法をご紹介します。


①「機器が納入されてしまった後」
 一方的に機器を納入してくる悪徳業者もいます。
 この場合、たとえ機器が納入されたとしても、「リース申込書に判子を押す前」であれば、リース申込を撤回することが可能です。

②「リース申込書に判子を押してしまった後」
 リース申込書に判子を押した後でも、「リース申込書がリース会社に届く前」であれば、リース申込を撤回することが可能です。

③「リース申込書がリース会社に届いてしまった後」
 リース申込書がリース会社に届いたとしても、「リース会社から利用者にリースの申込の確認があるまで」は、リース申込を撤回することが可能です。
 ご家族や従業員がリース会社からの電話等による契約締結の確認に応じてしまわないよう、周知徹底しておくことが肝要です。

④「リース会社からのリース申込確認に応じてしまった後」
 リース会社からのリース申込確認に応じてしまった後でも、「リース会社が販売会社に代金を支払う前」であれば、相手が本物の悪徳業者である場合にはリース申込を撤回できる可能性があります。
 あきらめずに交渉することが大切です。
 この後のステージに至ってしまいますと、残すは、「販売会社に対する損害賠償請求」などの方法しかありません。その場合、相手が詐欺行為をしたことを事業者側が立証する必要があります。


 リース申込を撤回する相手は「リース会社」です。「販売会社」との交渉は意味がないばかりでなく、契約解消を阻止されることとなり、むしろ有害といえます。

 たとえば①のケースでは、具体的に以下のような措置を講じます。

①「ただちに電話でリース会社に一報」します。
  その際、リース申込を撤回する旨を伝え、対応した相手担当者の名前を控えておきます。
②その後速やかに書面を作成します。
  "いついつ誰々にリース申込撤回の電話を入れ了解してもらった"旨も書き加え、
  「配達証明付きの内容証明郵便」でリース会社に送ります。
③その後、「販売会社」に対し書面を送ります。
  リース申込を撤回した旨、物件の速やかな撤去、などについて記し、
  「配達証明付きの内容証明郵便」で送ります。
④納入された物件は撤去にくるまで絶対に使用しないことが肝要です。
 (リース契約完了前は、納入された物件の所有権は販売会社にあります。)


 また、解約しようとすると、"もしリース契約を撤回すると買い取ってもらうことになる"、"設置してしまった後なので契約撤回はできない"など、販売会社が脅しをかけてくる可能性があります。
 こういう脅しには決して応じてはなりません。むしろ、"詐欺的な勧誘をしたことが明らかになれば、警察等への通報や損害賠償請求・告訴も辞さない"ことを営業マンに伝えましょう。

 なお、電話機やパソコンのリースにおいては、利用者が事業者であっても、「主として個人用・家庭用に使用するためのもの」については、クーリングオフが認められます。
 クーリングオフは、「クーリングオフが可能である旨が記載された法的書面」を受け取ってから8日中が原則。事業者向けには販売会社は法的書面を用意していないので、契約から5年間はクーリングオフできる可能性があります。
 「主として個人用・家庭用に使用するためのもの」が証明できる場合には、書面を作成し、「配達証明付きの内容証明郵便」で、リース会社と販売会社の双方に送るとよいでしょう。